授乳したあとも置くと泣いてしまいます。おっぱいが足りていないのでしょうか?
お母さんが人工乳を足す理由のなかで、「母乳が足りないと思ったから」が大きな割合を占めます。母乳が足りないという理由は表1に示すようにいろいろありますが、母乳が足りているかどうかの目安ではなく、新生児~乳児期早期ではふつうのことなのです。
実際には本当に母乳が不足していることは少なく、適切な援助がなされれば、ほとんどのお母さんが自分の子どもを母乳だけで育てることができるといわれています。
時間で(5分など)反対側のおっぱいに移るお母さんもいますが、できれば片方をしっかりと赤ちゃんがのめるよう時計はみないほうがよいでしょう。片方が飲み終わってから反対側のおっぱいを与えるとよいでしょう。
インターネットで得られる情報は必ずしも母乳育児についての適切な情報でない場合も多いものです。ですので、「児が十分に母乳を飲んでいるサイン」(表2)を知っておくとよいでしょう。お母さん自身でチェックすることで、母乳が足りているかどうか確認できます。
こんなに頻繁に授乳するの?と心配になるお母さんもいらっしゃいます。母乳には、赤ちゃんに必要な栄養素がバランスよく消化しやすい形で含まれています。特に生後すぐの「初乳」は、赤ちゃんを病原体から守ってくれたり、善玉菌が赤ちゃんの腸に住み着くのを助けてくれるなど、赤ちゃんを守る成分がいっぱいはいっています。そして産 後2~3日が経つと成分は大きく変化し、そのとき必要となるカロリー源である乳糖や脂肪が増えていきます。赤ちゃんにとって、 母乳はまさにオーダーメイドの栄養です。母乳育児を軌道に乗せるために最も大切なのは、赤ちゃんがほしがっていると思ったら何度でも繰り返しおっぱいを吸わせること です。頻繁に泣いておっぱいをほしがるのは、母乳は消化がよいからです。飲んだ母乳が胃の中で半分になるのに平均47分しか かかりませんが、ミルクだと平均65分かかります。赤ちゃんにとっては、少量の母乳をこまめに飲む方が負担は少なく消化もよい ので、心配しないで。根気よく何度でも授乳を続けることによって、母乳の分泌が促進されていきます。
表1. 母親が母乳不足を感じる主な理由
赤ちゃんの様子
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赤ちゃんがよく泣く、母乳を飲み終わっても抱いていないと泣く
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頻繁に飲みたがる、長い間乳首を離さない。
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乳房をすぐに離してしまう
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指やこぶしを吸啜する。
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人工乳を補足すると飲む。
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長時間続けて寝ない(寝なくなった)
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排便が毎日ない(生後4-6週以降)
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赤ちゃんが大きいから母乳がもっと必要。
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赤ちゃんが小さいから成長のためにもっと必要。
母親の様子
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母乳が薄くみえる、あるいはそう言われた
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搾乳しても出ないか、少量しか搾れない
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乳房が張らない、前より柔らかい
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母乳が漏れない(漏れなくなった)
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授乳前は授乳中のオキシトシン反射のサインを感じない(感じなくなった)
表2. 児が十分に母乳を飲んでいるサイン
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赤ちゃんが24時間に少なくとも8回おっぱいを飲んでいる。
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授乳の際、吸啜のリズムは母乳が出てくるとゆっくりになり、嚥下の音やごくごく飲み込む音が聞こえるかもしれない。
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赤ちゃんは生き生きとしていて筋緊張がよく、皮膚の状態も健康である。
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授乳と授乳の間は満足している様子である。(ただし、十分に飲んでいる赤ちゃんが別の理由で機嫌が悪いことはあり、それによって母親が自分の母乳が足りないのだと思い込むこともある。)
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24時間に色のうすい尿で6枚から8枚(布の)オムツを濡らす。(注:紙オムツの場合はもっと少ないこともある)
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24時間に3回から8回便をする。月齢が進むと便の回数は減るかもしれない。
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一日平均18-30gの割で体重が着実に増えている。
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母親の乳房は授乳前には張っているような感じがあり、授乳後には柔らかくなるかもしれない。ただし、すべての女性がはっきりとした変化を経験するわけではない。